雪のなかに猫
用意ができて外に出れば車が目に入る。運転席はやはり奏さんで、いつもの見慣れた黒い高級な車だった。
「こんばんは」
乗り込み挨拶をすると挨拶を返してくれる奏さん。奏さんは振り返り誠さんを見て呟く。遥ちゃんは挨拶してくれるのにな〜。って。それを聞いた誠さんは少し不機嫌になるも挨拶していた。
「ところでどこに行くの?この時間なら……混んでるかもだけど」
「和楽堂に行ってくれ。予約はしてある。」
「了解。」
行き先を聞いて車を発信させる。
車内に流れる音楽と流れる外の景色を静かに見ていたら車が駐車場にとまる。誠さんがドアを開け降りてから私が降りようとすれば手を差し出される。
首をかしげてたら、どうぞ、姫様。なんて笑いながらも手を取られ降ろされる。今の場所は結構な人通りで、女性だけではなく男性までもが誠さんを見ている中での行動と言葉だったので、女性からの鋭い視線がビシビシと刺さる。
ふふ。と笑う声が聞こえ伏せていた顔を誠さんに向けると目が合った。どうやら私をみて笑っていたみたいだ。
「どこか、へん?」
「ぜんぜん。むしろ……可愛らしい。」
と、言っておデコにキスをする彼に、周りが叫び出す。私への視線はもっと鋭くなったのだった。
「お二人さん……道でいちゃつかないでねー。」
「い、いちゃ………いちゃっいてないです!!」
「え、そうなの?じゃあ、もっとしてもいいよね?」
奏さんの言葉に否定したら、何故か微笑み近づいてくる誠さん。そして、ビシビシと刺さる視線にオロオロしていたら私を呼ぶ声が遠くから近づいてきて、声のするほうを向けば綾ちゃんが駆け寄ってきた。
「あ、綾ちゃーーーん!!」
私はこの場所から逃げたくて綾ちゃんこと、綾華ちゃんに飛びついた。飛びついたことで驚いた綾ちゃんは驚きはしていたが、私を抱きとめてくれてお互いが抱きしめ合う。
「遥ちゃん!!会いたかったよーー!!」
「私も!ありがとう綾ちゃん!!」
君は救世主だ!!と叫びたいのを抑えて抱きしめあってると誠さんが来て私と綾ちゃんを切り裂こうとする。
「綾華ちゃん。離れようか。」
「誠さん……嫌です!!は、遥ちゃんは私のです!」
「すぐに離れるんだ」
少し怒ってる誠さんに綾ちゃんが少し震えているが離さない。それを見ながらも
「女の子を睨むなんてダメですよ!」
「なっ………」
私が言った言葉に誠さんは固まり奏さんは少し肩を震わせて笑うのを我慢している。そうしていると少し遅れて達也さんが来た。そんな達也さんに目を向けた誠さんはニッコリと笑い私を見て
「女の子はだめなんでしょ?なら、男ならいいんだね?」
「ダメ」
「え?」
「…ダメです……」
「ん?」
「だ、ダメです………よ?」
私がダメだと言う度に笑顔に磨きがかかり口は笑っているが目は凄く普通……そして、これ以上言ったら私の命が危険だと本能が告げて
「達也さん……」
「ちょ、遥ちゃん……見捨てないで……」
達也さんもこの状況があまり宜しくないと悟ったのか逃げ腰で私にそういうが……我が身可愛さで……
「はい。大丈夫でございます。」
「ノーーーー!!遥ちゃん信じてたのにーーーー!!綾華!おま、覚えてろよ!!」
私の言葉に誠さんはとてつもなくいい笑顔になり、一歩また一歩と達也さんに歩み寄る。達也さんは誠さんの逆で逃げていく。
「お、お兄ちゃん……ごめん。骨はちゃんと拾ってちゃんと捨てるから!!」
「捨てんなーーー!!ギャーーーー」
誠さんはすごく楽しそうに達也さんで遊んでいた。それを見ながらも奏さんは笑いを抑えたのか私達に中に入ろっか。と微笑み中に誘導してくれたのだった。