雪のなかに猫




どうやら誠さんが言った知り合いとは、和楽堂(わらくどう)と言うお店の大将、大和さんという人らしい。彼は若いながらもお父さんのお店を継いで5代目の大将だとか。お父さんは赤髪じゃ無かったら高校を卒業してすぐに継がせる気だったみたいだが赤髪で当時も現在もチャラい大和さんに継がせるのに無駄に三年かかったとか。




回ってないお寿司だったので少し遠慮気味に食べていたのだが……次々と出されるお寿司についつい食べてしまう。それに、大和さんの腕が凄いのでついついその握り方に魅了されて頼んでしまうのだ……





お腹いっぱい食べた私達は帰る予定でいたのだが、達也さんの一言で遊びに行くことになったらしい。向かうのは達也さんが良く行くBARの中にある遊び場らしい。




「遥ちゃんはどんなお菓子が好き?」



「え、どんな?」



「うん!ケーキとか、クッキーとか」




綾ちゃんと並んで歩く。その後ろで私達を見守っている大人、誠さんと奏さんと達也さん。




「んー。あ、綾ちゃんと食べたあのドーナツ!!あれすごく美味しかった!綾ちゃんと誠さんと達也さんで食べたってのもあるけど……また行きたいな」





そう言うと綾ちゃんは嬉しそうに頷いて食べに行こう!!と言う話に盛り上がる。




もうね、私に向けられる敵意の視線や話し声は無視することにした。だって、私が誠さんの隣にいる限りそれはなくなることがないと思うから。




綾ちゃんと楽しく話しながらも歩いてると誰かとぶつかった。綾ちゃんが驚きながらも私を見る。そんな中私はその人物から目をそらせないでいた。




「え、遥?」



「っ………」




私にぶつかってきた人物は私がさいも苦手とする実の妹だった。




「え、マジで遥なの!?なんで生きてんの?ってか、なんでこんなとこにいんの?ママもパパもここの街から出てけって言わなかったっけ?」




「…………」





会いたくなかった。できるなら二度と。でも生きてる限りは出会ってしまう。世界がすごく広いと言っても……





黙っている私を心配して綾ちゃんが声をかけてくれる。あいつを少し睨みながら。




「あなた誰ですか?と、言いますか、誰の女性に手を出してるか、おわかりですか?」



「はぁ?あんたこそ誰よ。こいつが誰の女だろうが知ったことないね!」



「やめて」



「それよりあんた、この女が何をしたか知ってるの?この女わね、親の」



「辞めろ。」




睨み合う妹と綾ちゃんに思いのほか小さくなった声で止めに入るが体が思うように動かずその場に立ち尽くす。それをいいことに妹は綾ちゃんに私がしたことを話そうとしたが、その前に誠さんが静かに止めに入った。





「なっ!」




妹は誠さんを見て目を見開く。妹は彼のことを知っているみたいだ。そんな妹を見下ろす誠さんは少しだけ黒いオーラを纏っていた。




「君は確か城内(じょうのうち)さんの二番目の娘さんだったよね?」



「っ、は、はい。」



「君がいいかけたことは聞かなかったことにしてあげる。だから、すぐこの場から立ち去ってくれる?君を見てると……すっごくイライラする。」




冷たく言う誠さんに私までもが怖くなるが、私は誠さんに抱きしめられていて顔を見ていない、それに対して顔を見ている妹は倍に恐怖を感じているだろうと思う。





「そうそう、城内さんによろしく言っといてもらえる?近々お伺いするって。」




そういった誠さんに妹の空気が揺らいだ気がしたが、誠さんが歩き始めたため妹の顔を見ることはなくその場を立ち去った。




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