雪のなかに猫




お互い夕飯も済まし私がお風呂から上がると何故かリビングの空気がピリピリとしていた。触らぬ神に祟りなし。と私はリビングに行かず部屋に戻ろうとしたが……その前にモモが鳴いて誠さんがこちらを見る。





なんてことしてくれてんの。とモモを見るがどこ吹く風でスーッと誠さんの部屋に入っていく。ピッタリと笑顔を貼り付けた今までにない誠さんの不自然な笑顔に1歩下がる……




1歩下がったからと言って誠さんの足が泊まるわけでもなく、ズカズカと歩いてきた誠さんに壁に追いやられ壁ドンという胸きゅんになるはずの壁ドンをされたが……今の誠さんの笑顔で壁ドンされても嬉しくもない。





「遥。もう一度聞くよ?俺の留守中に誰か来なかった?又は誰かに何かを渡されなかった? 」






そう言われても、心当たりが………





「うん。もう回りくどいことは言わない。……これ、見覚えあるよね?誰に渡された?」





不自然な笑顔を少し緩めもっと不気味な笑顔になる誠さんの手に握られているチップ見てめを見開く。




そんな私を見て誠さんは、貼り付けていた不気味な笑顔を取って、いつもの表情になり私の頬をするりと撫でる。



いつもならくすぐったいと首をすくめるが今はそれどころじゃない。中身が何かわからない私宛の情報を保存して置けるチップ……誠さんの手に握られている物に手を伸ばそうとしたがサラッとかわされる。





「返して。」



「だめだ、遥、このチップの内容を見たかい?」



「…………」





知らない、知らないけど……良くないものだというのは何となく分かっている。だから取り返そうとした。もう一度手を伸ばそうとすれば、その手を掴まれ引き寄せられ、腕の中に包み込まれる。





「っ…………」




「これは返せないよ。ゴミ箱に捨ててあったということは君にはいらないものだったんだろ?なら、俺が貰ってもおかしくない。…………君は見なくていいものだよ。」





そう言って優しく頭を撫でられ、頭に軽くキスされる。私は優しく包み込まれる中不安が押し寄せてきて落ち着かない心を沈めるため誠さんに身を任せた。






きっと誠さんは中身を見た。中身を見てどう思っただろうか……私はそれを見たわけじゃない。見てないけど良くないものだと思う。





誠さんは……それを見て……





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