理系教授の秘密は甘々のはじまり
"コンコン"と教授の部屋の扉をノックする。

宣言通りすぐに部屋の扉が開き、いつもよりカジュアルな格好をした葉山が現れた。

大学4年間、波実と葉山の関係は"一般学生と教授"という接点しかなかった。

波実が大学院の臨床薬理動態研究室に入ってからは、葉山との距離はぐんと近づいた様に見えたが、女嫌いと噂される葉山とは必要以上の話をすることもない。

直属の指導者は仲代助教授で、彼女を介していれば十分研究も論文も進んでいくからである。

葉山は、職場では白衣。学会ではスーツ。
プライベート,,,は謎だった。

シルバーグレーのシャツに黒いスラックス。
今のこの格好には既視感を覚えるが、歓送迎会などで着てきたことがあったのかな?

なぜか葉山は波実の手を取り歩きだした。

「それじゃあ、行こうか」

もうすぐ18時。まだ夕食には早くないかなー?

繋がれた手に疑念も抱かず、波実は手を引かれるままエレベーターに乗る。

葉山が最初に向かった先は、意外な場所だった。



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