理系教授の秘密は甘々のはじまり
"なんでこんなに無防備なんだ"

葉山は、隣で眠る波実の寝顔を見ながら考えていた。

右手に顔をのせた状態で横を向き、波実の半渇きの髪を左手ですく。

いつも難しい顔をしてパソコンに向かっている様子とは対照的に、あどけない寝顔をさらしている。

綺麗というよりは可愛い顔立ち。アニメの主人公の友達にいそうなタイプだ。

セミロングの髪をいつも1つ結びにしている。
リケジョの彼女は男性には興味がないのか、同期や後輩男性のあからさまな好意にも気づかず、自由な生活を謳歌しているようにみえた。


葉山が波実と出会ったのは、彼女が大学院に進学する際に、葉山の研究室で面談をした時だと認識している。

面接と小論文。

大学の教授からの推薦もあったので、内容がよほどひどくなければ落とす理由もない。

葉山は特に迷うことなく"合格"に丸をした。

鈴木は可愛い。だが深入りしてはいけない。葉山は自分を律していた。

実際、どんな女もうっとうしかった。
勝手に外見に惹かれて近寄ってきては、付き合い始めると

"思っていた人とは違う"

と怒って去っていく。

初めは好かれようと、相手の好む自分を演じてはみたが、長く続けるとさすがに無理が出てくる。

他人が理想とする自分。好きでこんな容姿に生まれてきたわけではない。

不細工ならよかったのか?と聞かれたらイエスとは答えられないが、恋愛のために自分を偽るのはバカらしくなっていた。

大学院時代に最後の彼女と別れてから、もう6年近くが過ぎようとしていた。
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