七色ペンダント
すると、廊下の奥から左之さんが歩いてくるのを見つけた。
多分、僕は今暗い顔をしている。本調子で笑えればいいけど、生憎今の僕にそんな気力は無い。
下を向いてすれ違おうとすると、悪くも左之さんは足を止めた。
「総司」
「…なんですか」
「お前、なんかあったか?……なんかあったかって変か。あんま、自分を責めんなよ」
左之さんが言っているのは文の事だろう。けど、心配する彼の気持ちにも今は応えられず、ろくに返事もせずにその場を去った。
文にあんな事を言われたのも嫌だし、文がもう新選組の一員じゃないってことも嫌だ。それに、その事で皆に悪態ついてる自分にも嫌気がさす。
サボりがちだった稽古場にふらっと立ち入ると、以前とは打って変わって士気のない隊士達をよそに、木刀を取り出して八つ当たりするかのように、それを何度も何度も振り下ろした。
「沖田さん、今日はやる気出てんな」
「元気出たんならいいんだけどな……」
そんな隊士達の話し声を、耳に蓋をして打ち込みに熱中した。
汗が滲んだその時、土方さんが道場に顔を出した。そして辺りを見回し、僕を見つめると歩み寄ってきた。
「総司、話しがある」