+小悪魔恋愛2+
家に帰ったって落ち着かない。
どうせ今日も柚がうちに来ることはないし。かといってやることも別に無いし。
まっすぐ帰ることもしないまま、なんとなく足を伸ばしてこんなところまで来てみたけど。
はぁ〜っ…
涼しくなった夕暮れの空に、勝手に溜め息が出る。
「それで、こそこそ様子を伺いに来たってことか」
「うわっ!純平」
大きなガラス扉の中を覗きながら考え込んでいたオレの背後から、いきなり純平が顔を出してきた。
「な、なんでここにいるんだよ!」
「なんでって、オレここの常連だもん。言っとくけどオレは、陸に紹介する前から柚ちゃんとは友達なんだからな」
そう言って店に入っていく純平。
ここはちょっと洋風に作られたおしゃれなカフェで、柚は大学に入った頃からここでバイトしてるらしい。
それはずいぶん前から知ってたけど、なんだかんだ言って一度もここへ来たことは無かったオレ。
だってなんか…、そういうのって照れるし。
「入るのか入らないのかどっちだ」
「えっ!は…はい、る……」
再び入り口の扉を開けて、純平はオレに声をかけてきた。
入るつもりなんて本当は無かったんだけど…、今さら度胸が無いとも言えなかった。