35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~
な、なんだか、もしかしてこれってやばい?

声を上げた男性の周りにいた人たちだけでなくレッドカーペットの反対側にいた人たちまでもが私たちを見ている。
「昨日の夕方のテレビ見てたよー」
「やっぱ、昨日のテレビに出てた人だよね」
「サインして」
「どこの会社の人?」
「動画サイト再生回数すごいことになってるんだって」という声まで聞こえる。

昨日の夕方の地方局の街頭天気予報に数分間出ただけなのに。誰か他の芸能人と勘違いしているんじゃないだろうか。

一般の人とスタッフスペースを隔てているのは簡単な移動式の金属製ポールとチェーンだけ。
簡単に乗り越えられることができるし、手をのばされたらつかまれてしまいそう。

「朋花さん、ここから離れなきゃ」
こそっと朋花さんに耳打ちすると、彼女も頷いたけれど時すでに遅し。私はチェーンの向こうから男性の伸ばされた腕に手首をつかまれてしまった。

警備スタッフも配置されているけれど、彼らが守るのは芸能人であってこんなスタッフ専用スペースにまで固定の警備スタッフは置かれていない。
何かあれば駆け付けてくれる距離にはいるのだけど、運悪く、そこに次の芸能人の車が到着してしまったため警備の目はそちらに向いてしまっている。。

「ねぇ、ねぇ、君たち映画スタッフだったの?もしかして芸能人?」
私の腕ををつかんでいるのはニット帽に重ね着のTシャツ、細身のパンツ。見た目はどこにでもいるような若い男性。
つかんでない方の手にはレッドカーペットを歩くお目当ての俳優にサインをねだるためなんだろうか映画のパンフレットを持っている。

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