35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~
目の前には新しいグラス。きれいな青のカクテル。チャイナブルー。
・・・チャイナか。

「進藤さん来週は上海だって」

「果菜、そんなに寂しいならしばらくうちに泊まれば?」
私の沈んだ声に美和が背中をさすってくれる。

「いいよ、今夜だけ泊めてくれれば。美和だって結婚式前で忙しいんだし」

「でも、果菜のそんな顔初めて見たし。果菜っていつもクールで、いつも付き合ってる男の方が寂しがってたよね」

男の方がって・・・そんなことはないとは思うけど。
確かに今まで誰かと付き合ってて会えなくて寂しいと感じたことは無かったかもしれない。
私はいつでも仕事が最優先で。二番目が自分の生活。彼氏は三番目だったのかも。

「そうだよ。大学時代の彼氏だって一緒に飲んだ時に酔って愚痴ってたじゃん。果菜の一番になれないって」

ああ、そんな事があったような気がする。すっかり忘れてたけど。
だってもう4年も前の話だし。


「はぁー」
ため息と共にチャイナブルーをごくりと飲んだ。

今の貴くんの状態。
もちろん仕事が最優先。私は貴くんの何番目かな。仕事が最優先なのはそりゃあ当然なんだけど。
仕事しない男なんて最悪だ。
それでも、一緒に住んでいてもこんなに会えないなんて思ってなかったし。私はせめて二番目になりたい。

結婚を決めてすぐに両方の親に挨拶に行って。両親から許可を得て私たちは一緒に暮らし始めた。

それから急激に忙しくなってすれ違い生活が始まった。私が仕事に行っている間に帰宅してシャワーを浴びて着替えてまた出て行っていることもある。
深夜までレコーディング、ミュージックビデオの撮影、再来月から始まるライブの打ち合わせ。合間に音楽番組の出演。昼間も打ち合わせや取材。ご飯は?睡眠は?身体は大丈夫なの?

貴くんは私と会えなくて淋しくないの?


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