35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~
「誰だ、そんなつまんねー嘘、果菜に吹き込んだヤツは」

果菜が怖がらないようにできるだけ抑えながら声を出した。

「ごめんね、私も嘘だってわかってるの。でも、どうしてもなんか、そんなこと聞いちゃうとね」

果菜は俺にしがみついたまま顔を上げない。
可哀想な果菜。
芸能界のような足の引っ張り合いのはびこる汚い世界で生きたことがない果菜は悪意を受け流すことができない。

「ユウキの誕生日パーティーの時だな?」

そう問いかけると、また果菜の肩がびくっと揺れた。

当りか。
よし。

「果菜、確かにお前と出会う前に付き合った女がいなかったわけじゃない。それは仕方ない。でも、乱れた付き合いをしたことはない」

果菜はうつむいたまま黙って聞いている。

「俺が年下に『さん』付けで呼べと強制したことはない。
ただ、俺は冷たいイメージが付いているから、年下は普通「さん」付けしてくるな。だからと言って「さん」付けするしないってのは身体の関係があったとか全く関係ないぞ。だいたいそんなのおかしいだろ」

果菜は小さく頷いた。

「だけど、そんな話を聞かされた後に人前で俺のこと『タカト』と呼ぶのはイヤだろうな」

果菜の頭を、背中を、ゆっくり撫でてぎゅっと抱いた。

「気が付いてやれなくてごめんな」

「進藤さんのせいじゃないよ」

「俺のせいで果菜はわかりやすく妬みのターゲットになるからな」



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