35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~
お財布を出そうとするとアツシさんがニヤリとする。
「貴斗から支払いを自分に回すように連絡もらってるからいいよ」

「え?アツシさんに連絡があったんですか?」

「ああ。飲みすぎないようにみて欲しいってさ。最近顔を合わせていないことも気にしてたぞ。姫は愛されてんな」

ああ、アツシさんの背後にちらちらと貴くんの影が見える気がする。
そっか、私のこと気にかけてくれているんだ。
会えなくても、メールが1行でも、電話がひと言でも私は彼に守られている。

「ふふっ。そうみたいですね」
思わず笑みがこぼれる。

「そうやって笑ってなよ。淋しいのならここに来ればいいさ。ただし、大人の飲み方で」

ちょっと反省。今日の私は子どもだった。
「ハイ。今日はごめんなさい。心を入れ替えたらまた来ます」

「待ってるよ。二人とも気を付けて帰って。良かったら美和さんもまた。旦那さんになる人と一緒に来てくれれば嬉しいな」

美和はイケメンアツシさんに笑顔で話しかけられてポッと頬を染めた。
アツシさんは私たちをドアの外まで見送ってくれた。


私と貴くんの思い出のエレベーターに乗るとまた彼に会いたくなって胸がきゅんとする。

今日彼がどんな仕事をしているのかとか詳しいことは知らない。帰れない程忙しいのに、私が今夜お店に行くことをアツシさんに連絡してくれていたと思うと嬉しくて胸が温かくなる。


明日の夜は会えるだろうか。
さっきまでのイライラするような気持ちはすっかりなくなっていた。


次に彼が帰ってきたら笑顔で迎えよう。
「お帰りなさい」って。


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