35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~
「お、目覚めたんだね。点滴が効いて少しは楽になったんじゃないかい?」

カーテンの向こう側から白衣の男性が現れた。
40才くらいだろうか。どちらかというとふくよかで優しそうな風貌の男性だ。大きな瞳の女性が「先生」と呼んでいたからこの人が先生で彼女はナースなんだろうか。

「すみません。ご迷惑をおかけしました。身体はかなり楽になりました」
ゆっくりと身体を起こすと、少しクラっとする。
「あっ!あんまり無理しないで。どなたかご家族の方とかお呼びしましょうか?」

慌てて俺の身体を支えてくれた彼女が思ったより力強くて、今まで女性に感じたことのない安心感を覚える。

「いいえ、すみません。大丈夫です。自分で帰れますから」

彼女は俺の身体から手を離し心配そうに目を細める。
「本当に大丈夫です。頭痛はよくあるんですが、今回は仕事の関係で睡眠不足も重なってしまってたせいで酷くなってしまったようで。ご迷惑をおかけしました。あの、会計は?」

「治療してるから一応カルテは作らせてもらうよ。でも、今日はもう事務員がいないから会計ができないんだ。明日以降に保険証を持ってきてもらえれば保険負担で会計するからね」
男性医師がそう言うと、彼女が診察申込用紙と記載された紙を俺に手渡した。

「住所と年齢、お名前だけ記入してください。読み書きはお辛いでしょうから問診は私が口頭でお聞きしますね」
軽く微笑まれてドキッとする。
< 47 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop