35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~
「でも、これもお仕事なんでしょ?やってください」
「いや、無理だ。もう表情なんて作れない」

「ダメですよ、そんなこと言って。さっさと撮影終わらせないと皆さんに迷惑でしょ」
「そう思うんならお前がやれ」

「何言ってんですか、私はモデルじゃありません」
「俺だってモデルじゃねえぞ」

これもあなたの仕事の一部じゃないの。
軽く貴くんを睨むと、さっきまでの強気な態度はどこへやら。珍しく王様が弱気な顔をしている。

「お前に惚れてから他の女の身体を触るのが嫌なんだよ。お前が嫌な思いをするんじゃないかって思うと。だから、こんな絵コンテみたいに女の首すじに唇を付けるなんてことしたくない」

え、それってキスっていうんじゃないの?
もう一度手元にある絵コンテを見ると、男性の顔が女性の首すじに触れているような。

「・・・これ、さっきの撮影でそのタカトファンのお嬢さんとかいう人にやったんですか?」
「・・・やった」

やったの?!
衝撃が襲ってきた。聞いてない、聞いてない。そんな仕事あり?俳優さんならラブシーンがあるだろうけど、貴くんはミュージシャンじゃん。

愕然としていると
「おい、果菜、唇はつけてないから!顔を寄せただけだ!勘違いすんな」
貴くんの慌てた声が遠くでした。
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