35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~
肩を揺すられて遠くに行きかけた意識が戻ってくる。

「やだ、ミュージシャンにそんな仕事もあるなんて思ってなかった」
嫉妬なんだろうか。不安なんだろうか。よくわからない感情が襲ってくる。キスしたわけじゃないのに変だ、私はどうしちゃったんだろう。

「だから、この役は果菜がやってくれ」
涙目の私の手のひらにキスをして私の頭を撫でた。

「こんな役できるか自信ないよ」
「大丈夫、着替えて化粧して立ってるだけだ」

「…ホントに?」
「ホントだ。果菜の顔は写らない。でもうなじくらいは我慢しろ」
しっかりと手を握ってもらっていると、いつの間にか車はスタジオの地下駐車場に入っていた。

「これやらないとスタッフの皆さんの今日のお仕事が終わらないんですよね」
清美さんに確認すると深い頷きが返ってくる。

「やってみます。自信ないけど、できるだけ頑張らせていただきます」
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