35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~
「果菜ちゃん、こっち」
私が委縮していることに気が付いたユウキさんが近付いてきて私の肩を優しく押し出すようにライトの下の立ち位置にエスコートしてくれる。

歩きながらユウキさんは周りのスタッフに視線を送る。
「緊張するなって方が無理だと思うけど、背筋を伸ばして立っててくれればいいから。あとは俺とタカトが何とかする。モデル役を引き受けてくれてありがとう。感謝するよ」

「でも、私でお役に立てるかどうか。足も震えちゃうし、姿勢もスタイルも悪いし。途中でも無理だと思ったらすぐに清美さんに頼んで事務所の綺麗ドコロとチェンジして下さいね」
「果菜ちゃん以外にタカトの相手役は無理だから観念してね」
クスクス笑いながら慣れないピンヒールの私が歩きやすいように肩を支えてくれる。

ユウキさんはいつも紳士なんだよね。
ニコッと笑いかけると、いきなり後ろからぐいっと腕を引かれてよろけてしまいフラッとする。
きゃっと声を出すと「おい、勝手に触んな」と王様の声が。
ユウキさんの隣に立っていたはずなのにいつの間にか貴くんに腰を支えてもらっている。

「お前も触らせんなよ」

「この鉛筆みたいなカカトのハイヒール怖いんだもん。それにここの雰囲気にも慣れないし。貴くんも清美さんもいなかったし」ムッとしつつ、こそこそと小声で不機嫌な王様に返事をすると
ああと頷き貴くんはぎろりと周囲に目をやった。
「確かにな」

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