35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~
ギリシャ神殿をイメージさせる白亜の柱が何本も建っている。
ユウキさんの指示に従うだけなのに足が震える。
周囲の呆れるようなため息が聞こえてきそうだ。
「果菜」
数歩離れて向かい合わせに立つ貴くんの声が大きく聞こえた。
「俺だけを見てここに来い」
視線を合わせると、そこには私を射抜くような目をしたLARGOのタカトがいて一瞬呼吸を忘れた。
そうだ、ここは私の大事な人の職場だ。
私のせいで迷惑かけるわけにいかない。
ひと呼吸して大きく頷くと、今度はタカトが視線を和らげて優しく笑った。
「おいで」
そこにいるのは私のよく知っている進藤貴斗、私の貴くん。
吸い寄せられるように一歩、また一歩と彼に近付く私の足はもう震えていなかった。