未来を見るなら、君と一緒に
「俺、ちゃんと嘘でしたって言っといたから」


「……え?」


「あれから落ち着いて考えたら、俺はんとどうしようもないやつだったよな。どうかしてた」



はぁっとひと吐きして、目の前のビールをグイッと飲み干す。



「賢晴が昔から最低だったことにつかなかったあたしにも責任はあるから」


「ごめん。ホント」



目の前にいる賢晴はいつの間にか、大好きだった頃の賢晴だった。



「反省の色が見えてるからもういいよ。今日は飲もう。最後のデート」



〝最後〟って言葉に若干ピクっと反応した賢晴。

本当なら、最後になんかしたくないはずだ。



「俺さ、潤のほうが仕事の覚えも早いし、患者に人気だし。嫉妬してたんだ」



ポツリポツリと飲み干したビールのジョッキを見つめながら話し出す。



「賢晴の方がどう見ても腕は上でしょ?」


「腕、とかじゃなくてさ。潤にはなんか見えない才能があるように感じるんだ。でも、俺認めたくなくてさ。悶々としてたら、お前に患者取られるとか言われて、あんなふうになっちまって……いっぱいいっぱいだったみたいだ。ごめん」



あたしに向かって頭を下げる。

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