未来を見るなら、君と一緒に
いつもよりもだいぶ早く退社をして、パパッと荷物をまとめて。
実家に戻るため、バスに乗る。



「お母さん、ただいま」



久しぶりに帰る実家の匂いを噛み締めながら、家に入る。



「おかえりって言いたいところだけど、あんた職場で問題起こして辞めてきたんだって?」


「……え?」



お母さんから先にその話をされるとは思っていなくて、正直戸惑った。
しかも悪い方に捕えられていたから、すぐに誰が言ったかなんてわかった。



「賢晴くんから電話きてたわよ」


「賢晴が……」


「勝手に別れるとか言っちゃって困ってたわよ?まったく……問題起こしたあんたとまだ付き合ってくれるなんていい子なんだから手放しちゃダメじゃない」


「いや……あのね、お母さん」



賢晴に絶大なる信頼をおいてるうちの家族たち。
あたしの話なんか当然聞いてももらえない。



「言い訳したって無駄よ。全部賢晴くんから聞いてるんだから」


「言い訳じゃなくて……」



本当のことなのに。
どうしてだれもあたしの言葉を聞こうとはしてくれないのだろうか。

< 17 / 176 >

この作品をシェア

pagetop