未来を見るなら、君と一緒に
1度だけ危ないことがあった。

買い物に少し時間がかかってしまって、賢晴の仕事終わりの時間に重なることがあった。

賢晴は毎日のように、仕事が終わるたびにあたしの部屋の前に来ていた。
だから、その日もあたしが部屋に入った直後に足音が聞こえてきて。
慌てて、鍵を閉めた。



「いつまでこんな生活続くんだろう」



これを世間一般にはストーカーというのだろう。

本当は仕事もしたかった。
でも、賢晴の帰宅時間に合わせないためにはどうしても短い時間になってしまう。

頭を悩ませていたとき、以前からアパートの玄関がオートロックになることが決まっていたようで、工事がなされた。

賢晴はさすがにオートロックから先は誰かについてでも来ない限り、来れなかった。
そして、プライドだけは高い賢晴。
誰かについて、怪訝な顔をされるようなことを最も嫌う人間だ。

オートロックの工事が終わってからは1度も部屋の前にくることはなかった。

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