未来を見るなら、君と一緒に
賢晴の顔なんか見たくなくて、そして、なにも話したくなんてなくて。
あたしはオートロックを解除して、エントランスから中に入る。



「あ、俺も行きます」



そう、陽くんもあたしについて中に入る。



「じゃあ、俺はこれで」



賢晴も中に入ってきたらどうしようかとハラハラしていたが、なぜか入ってくることはしなかった。



「賢晴さん、お疲れ様です」



陽くんの言葉に片手をあげる賢晴の表情はあの頃のままだった。



「賢晴さんと一言も話さなかったけど、喧嘩でもしたの?」



エレベーターのボタンを押して、待ってる間、陽くんがあたしの顔をのぞき込む。



「賢晴とはもう別れたよ」


「え!?潤と賢晴さんは絶対いつか結婚するもんだと思ってたよ」


「はは……あたしも思ってたかも」



なんて言うあたしは自分でも思うけど、他人事のよう。
だって、本当にそう思っていたし、一年前のあたしには信じられないだろうなって思う。

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