未来を見るなら、君と一緒に
「お?料理振舞ってくれるの?」


「……まぁ、簡単なものなら」



あたしだってまったく出来ないわけではない。
レシピの通りに作ったことしかない。
っていうか、その通りにしかできない。



「じゃあ、楽しみにしてる」


「……頑張ろ」



いつもお世話になってる陽くんに少しでも恩返しがしたかった。
こんなこと、恩返しにもならないかもしれないけど。



「約束」



自分の小指をあたしにさし出してくる。



「ん、約束」



陽くんの小指に自分の小指を絡ませればキュッと結ばれる指。

陽くんに触れられた部分から、全身に熱が伝わる。
前までのあたしなら、こんなことなかったのたのに。
いつから、陽くんにこんなに反応するようになったのだろうか。

自分の中でもう既に芽生えてるこの気持ちをまだ認められないでいる。

誰かに恋することにこんなに自分が臆病になるときがくるとは、思わなかった。

あんなに恋はキラキラして、素敵なものだと思っていたのに。

あたしをこんなふうにしてしまった元凶は、呑気にあたしを消したあの場所で働いて、そして終わったあとはあたしの家の前にくる。

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