未来を見るなら、君と一緒に
じわじわとあたし達に向かって歩いてくる彼女。

その目には光は宿っていない気がした。



「……っ」



陽くんは、なぜかあたしの前に出る。



「真凛、落ち着け……」


「陽ちゃんはいつもそう……あたし以外の子をみる」



陽くんの言葉は聞こえていないのか、どんどん距離を詰めてくる。

さすがに、彼女の様子が普通ではないことにあたしも気づく。



「真凛、止まれって」


「ねぇ、陽ちゃんのことどう思ってるの?」



彼女の視線は陽くんではなく、後ろにいるあたしに向けられていた。

あまりにも鋭い視線を向けられて、血の気が引いていくのがわかる。



「真凛、落ち着いてくれ、頼むから」



彼女が迫ってくるたびに、陽くんも下がるから後ろにいるあたしも必然と下がる。

でも、もうこれ以上は後ろが壁で下がれない。



「真凛、帰ろう」



もう下がれないからか、陽くんが彼女の肩を掴む。



「陽ちゃん……あたしを見てくれた」



彼女の顔はいっそうと明るくなる。



「ごめん、潤……こいつ、こうなったら止まらないから連れて帰るな」

< 49 / 176 >

この作品をシェア

pagetop