未来を見るなら、君と一緒に
「う、うん」



あたしの返事を最後に、陽くんは真凛さんの手を引いて出口に向かっていった。

真凛さんの手を引く陽くんにチクリと胸が痛む。

わかってる。
真凛さんの様子がおかしかったから仕方ないってことくらい。
そして、自分にはヤキモチを妬く資格なんてないってこともわかってる。

でも、ふたりが去っていった姿が頭にこびりついてモヤモヤして仕方がない。



「野球見て帰ろう」



せっかく陽くんが買ってくれたチケットだ。
隣の席に本来いるはずの陽くんがいないのはすごく寂しいけど。
でも、このチケットを無駄にはしたくないから。


野球を見ているあいだも、ふたりのことが頭から消えてはくれなかった。
今頃ふたりは何をしているんだろう。
いつもあたしにくらてる陽くんの優しさをあの子に与えているのだろうか。

そんなことばかり考えて、あまり試合にも集中はできなかった。



「さっさと帰ろう……」



試合が終わって、家の最寄り駅までいくシャトルバスがあるからそれに乗る。

思えば、1人で家に帰るのはどのくらいぶりだろう。

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