未来を見るなら、君と一緒に
すっかり陽くんと帰ることに慣れていたから、1人で帰るのはやはり寂しい。



〝さっきはゴメンね。もうバスに乗った?〟



窓を眺めてぼーっとしていると、陽くんからのLINEが届いた。



〝陽くんの分も楽しんできたよ。いまバスに揺られてるところ〟



──楽しんできた。
なんて嘘だ。

でも、こう言わないと陽くんが気にしてしまうから。
陽くんにはどうしても気にしてほしくない。
あたしが楽しめなかったことを知ったら、絶対に気にしてしまう。



〝今日は一緒に帰れなくてごめんな。〟


〝大丈夫。いつもありがとう〟



いつも、当然のように隣にいた陽くんがいない。
いつの間にかあたしの中で陽くんの存在が大きくなっていた。


あぁ、そっか。

──好き、なんだ。

まぁ、典型的な惚れ方なのかもしれない。
傷ついていた心に入り込んで来た人。
それだけで好きになるには充分すぎた。

だって、それだけじゃない。
ありえないほど、いい人で。
ありえないほど、あたしを大切にしてくれる。

考えたら涙が出てしまいそうで、あたしはそっと瞳を閉じた。

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