未来を見るなら、君と一緒に
「なんで、ここ?」



もう、賢晴はここに住んでないのに。
ここに停まる事が不思議だった。



「またここに住んでる」


「……え?」


「でもさ、この部屋にはひとつ足りないんだよ」


「足りない……?」



ひとつため息をつき、何も答えず車を降りて後部座席のあたしも降ろす。



「とりあえず行くぞ」



もう、抵抗しても無駄だってわかってるから、あたしは諦めて賢晴に腕をひかれるまま歩く。



「ほら、入れよ」



ひとつの部屋の前で賢晴がドアを開けてあたしの背中を押す。



「この部屋……」


「懐かしいだろ」



そこは紛れもなく、賢晴が一人暮らしをしていたアパートで。
当時はあたしも毎日のように過ごしていた部屋だった。



「どうして……」



学生時代のアパートなんて、狭くてボロいのに。
社会人になってお金もある賢晴が、ここにどうしてまた引越してきたのか不思議だった。

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