未来を見るなら、君と一緒に
「ここに来ればまた、潤を取り戻せると思って」


「な……っ」



取り戻せるとか取り戻せないとか。
あたしは誰かに取られたおもちゃじゃない。

それに、こういう風になった責任は誰にあると考えているんだろうか。



「潤は、陽のことが好き?」


「……っ」


「どうなの?」



賢晴の言葉にあたしはこくんと首を縦に振った。



「そっか」



ニッコリと笑う賢晴。

その笑顔の裏になにかが隠されてそうで、寒気がする。




「じゃあ、ここに置いとくまでだよね」


「は……?」



予想通り。
よろしくないことを考えてる賢晴。



「俺のとこにいないお前なんかお前じゃない」


「待って……。あたしは自分の居場所は自分で決めるよ」


「お前、いつからそんな自分の意見言うようになったんだ?」


「……え?」



賢晴の言葉の意味がわからなくて、首を傾げる。



「お前は、俺の言うことを笑って聞いてるだけの女だったのに。いつから自分の意見なんて持つようになったんだよ。腹立つ」



イライラした様子で壁にあたしの背中を押し付ける。

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