未来を見るなら、君と一緒に
あの頃はあんなに賢晴に身体を預けることをなんとも思っていなかったのに。
むしろ、あたしと賢晴を繋いでくれてる気がして嬉しかった。

いつか、この繋がりが家族になる証になるんだって信じてた。



「賢晴があの時あたしのことを信じてくれてれば、今も賢晴といたと思うよ」


「なんだよ、俺が悪いっていうのかよ」


「誰が悪いとかじゃないよ。もう、過去の自分とはさよならしたの」


「勝手にさよならしてんじゃねぇよ。俺はお前が好きだ」


「あたしはもう、好きじゃない」



もう、賢晴しかいないと思っていたあの頃の自分とは違う。
あたしには居場所がある。
今の住んでいるマンション。
そして、今の職場。
そして、陽くん。

だから、もう賢晴に依存はしない。



「ムカつく。俺の知らないお前を見せるなっていっただろ!?」



眉間にシワを寄せた賢晴がまたあたしに跨る。



「好きにしてもいいよ。でも、あたしの心は戻らないから」



それで自由にしてくれるなら。
もう、よかった。
それで、賢晴の気が済むなら。

せっかく、陽くんへの想いに気づけたのにな、とは思うけど。

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