キスの日のキセキ
「ただいま」

「お帰り~」

出迎えてくれたのは同棲して3年になる高瀬茂28歳。同じ会社の先輩。

社内恋愛は禁止ではないけど知られると何かと面倒なので内緒にしている。

もちろん帰りも別々。

私が買い物をして帰るので茂の方が先に家につくことが多いのだ。

「なんか今日は買い物の量半端ないね」

頭の中がキスでいっぱいになってて自分で何を買ったのかあまり覚えていない。

茂は買い物袋をダイニングテーブルの上にのせると袋の中から買ったものを取り出す。

「へ~~キス天か・・・ん?なんだこれ。千歳こんなもん飲むの?」

「え?何を?」

急いで部屋着に着替えてリビングに行くと茂がニヤニヤしながらドリンクを見せる。

「えええ?!私そんなもの買ったっけ?」

頭の中がキスでいっぱいで普段なら絶対に買わないであろう高麗人参エキス配合の

栄養ドリンクを買ってしまっていた。

だからお会計がいつもより大きかったと今頃気づく私もアホだ。

そして再び茂が袋から取り出したものに驚く。

「千歳、海外にでも行くの?」

差し出されたものは「はじめての英会話テキスト」だった。

「行かないよ」

どれだけ私はキスという言葉に支配されているのだろう。

でも理由はわかってる。
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