君を愛で満たしたい～御曹司のとろ甘な溺愛～

『別れたの？　だって長く付き合ってたわよね。仕事が忙しくて結婚を先延ばしにしているとばかり……』
「もう二年以上前の話よ。哲也、結婚してるんじゃない？」


あのとき鉢合わせした女性を頭に思い浮かべて言った。

浮気相手のことなんて忘れたいのに、鮮明に思い出せてしまうのがつらい。


『どうかなぁ。男性陣は別の人が連絡してくれてて、わかんない。なんだぁ、葉月に会いたかったな』
「ごめん」
『葉月は結婚は？』
「結婚は、まだ……」


あんな形で別れたことを当然知らない典子は、無邪気に聞いてくる。

あまり深く追及されたくないと困惑していると、スマホをスッと持っていかれてしまった。


「えっ、ちょっ……」
「初めまして。葉月の婚約者の一ノ瀬と申します」


なんと悠馬さんが典子と話し始めたので、あんぐりと口を開けてしまう。
しかも、『婚約者』って！


「——そうなんですよ。近いうちに結婚を考えているんですが、彼女は恥ずかしがり屋で。——同窓会ですか。もちろん出席させます」