君を愛で満たしたい~御曹司のとろ甘な溺愛~
この人も学術の人なのかもしれない。


「それでしたら、私が説明いたします」


こんなときのために用意している文献をファイリングした資料を取り出すと、その人は目を丸くしている。


「えぇっと、北里さんは営業じゃなくて学術の人?」
「いえ、営業です。ですがシリコーンオイルについては一応勉強しておりますので」


これは一ノ瀬さんの影響で必死に学んだ結果だ。

彼は常々、専門知識を武器にできるよう勉強を怠るなというのが口癖。
他の商社に勝ちたいのなら、知識の剣で立ち向かえと。

それもこれも、彼自身の失敗経験からの発言であることを私は知っている。


「北里さんすごいね」
「本城(ほんじょう)さん、ここにいらしたんですか! 会議の時間です」


そのとき、私より少し年下に見える、かわいらしい女性がやってきて、スーツの彼に怒りをぶつけている。


「蒼井(あおい)、そんなに怒るなよ。わかったって」
「お願いですから、副社長というお立場をお忘れにならないでくださいね!」
< 30 / 315 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop