君を愛で満たしたい~御曹司のとろ甘な溺愛~
仕事には一切の妥協を許さない人で何度も泣かされてきたが、そのおかげでできるようになったことが山ほどあり感謝している。


「髪、切ったのか?」
「あっ、はい」


彼は不意に私に手を伸ばしてきて、髪に触れてくる。
妙な色気の漂うその仕草にドキッとしてしまい、少し体を引いた。


「あぁ、悪い。お前の長い髪、結構気に入ってたから」
「ありがとうございます」


彼が『気に入ってた』という言葉を発するだけで周りがざわつくんだからやめてほしい。
たとえそれが髪のことだとしてもだ。

二年前、彼がインドに赴任したあと、静香くらい長かった髪をバッサリと切った。それからはずっとこれくらいの長さをキープしている。

だけど、長い髪を好いてくれていたとは知らなかった。

私たちの会話を横目に、静香は自分の席に向かう。
しかし彼の目は静香もちゃんと捉えていた。


「森本も久しぶりだね」
「はい。ご無沙汰しております」
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