君を愛で満たしたい~御曹司のとろ甘な溺愛~
あれから別の製薬メーカーとも話が進んでいる。まだ採用には至っていないのだけど。


『うん。北里の幅広い活動は他の人間の刺激になる。ライフテクノロジー事業部は原材料を売ればいいと思ってる人が多いからね。でも、これでこそ総合商社だと思う』


たしかに、機械まで手を出している人はいない。
だけど、一ノ瀬さんが導いてくれたんじゃない。


「ありがとうございます」


彼に褒められるのは本当にうれしい。


『北里、どうかした? 元気がないように感じるんだけど』
「えっ……」


たったこれだけの会話で、どうしてそんなことに気がつくの?

精神的に満タンな私は、まだ静香にも哲也との破局を知らせていない。
泣かずに話せる自信がないのだ。

だから、必死になんでもない顔をして仕事に没頭しているのに。


『お前は、なにか成功すると声が弾むんだよ。心の中のガッツポーズが見えるとでもいうか。仕事がうまくいっているはずなのに、それを感じられない』
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