君を愛で満たしたい~御曹司のとろ甘な溺愛~
それもいけなかったんだろうな。

ふとそんなことを考えてしまい返事ができない。


『北里? イヤならイヤと言えよ?』
「ち、違いますよ。あのシャトーブリアンおいしかったなって思い出してたんです」

『おぉ、また食いたいな。早く帰れるように頑張るよ。北里、頑張りすぎるな。これまでは俺が止めてやれたが、今はそれができない。心がすり減るまで頑張ってはダメだ。お前はもう十分に努力できているんだぞ』


自分が去ったあとの仕事の進捗状況を確認するために電話をくれたのだと思ったけれど、もしかしたらあんな別れ方をした私を心配してくれているのかもしれないと感じる。


「そんなに褒めないでくださいよ。うっかりさぼっちゃいますから」
『さぼり方を知らないくせに。インドに来ておいてなんだが……ちゃんと俺を頼ってこい。いいな』


念を押す一ノ瀬さんに目頭が熱くなり、勝手に涙が流れていく。


「はい。困ったら電話します」
『了解。待ってる』
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