君を愛で満たしたい～御曹司のとろ甘な溺愛～
それからはとりあえず通常業務の開始だ。

私は今、大手のゼネラル製薬を担当していて、一ノ瀬さんがインドで提携にこぎつけた製薬メーカーの作ったジェネリック医薬品の取り扱いを売り込んでいる。

ジェネリック医薬品というのは、先発品と言われる新薬の特許が切れたあと、同じ有効成分を使って作られた医薬品のこと。

開発費が必要ないことから新薬より低価格で、医療費が年々増加している我が国でも積極的に使用されるようになってきた。

ただし、新薬と効き目が同等なことを証明する試験をクリアし、厚生労働省の承認を得なければならない。


一ノ瀬さんがインドに渡ったのは、インドには製薬メーカーが多数存在し、欧米とのビジネスが盛んな一方、日本との取引が少ないからだ。

しかし、日本の基準に合わせた製品を作ってもらわなければ意味がないため、彼自ら乗り込んで、現地メーカーと商品改良を続けてきて、今がある。


御曹司という立場なら、無難に仕事をしていればいつか社長のイスが転がり込む可能性も高いのに、彼はそれを嫌った。
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