君を愛で満たしたい~御曹司のとろ甘な溺愛~
昔からそういう人だ。
努力は惜しまず、それを当たり前だと思っているのでひけらかすこともない。

少しでも気を抜くと、あっという間に彼においていかれるので、私も必死に勉強を重ねた。
そのおかげで、成功した事案も多い。

しかし、彼も最初からなんでもできたわけではないのだ。



——それは、私が入社して半年ほど経った頃のこと。

教育係の一ノ瀬さんと一緒に営業に出て、商社マンとしてのノウハウを叩きこまれつつあった私は、彼の苦悩を偶然にも知ってしまった。

営業先から会社に戻り、フロアにいた人たちにコーヒーを淹れるために給湯室で作業をしていると、廊下から誰かが話しているのが聞こえてきた。

しばらくすると、そのうちのひとりが一ノ瀬さんだということはわかったけれど、給湯室を出ていけなくなってしまった。

だって……とんでもない嫌味の数々が聞こえてきてしまったからだ。
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