帰りたい場所
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結婚を、しました。
夫となった長谷川大和さんと、私こと佐伯花菜は同じ会社で働く間柄で、けれど営業の彼と事務の私にそこまでの接点はなく、すれ違えば挨拶をしたり、社内飲み会でグラスを時折交わす程度なものだった。
素敵な人だな、とは以前から思っていた。
外回り帰りの彼の背中に声をかけると、必要以上に驚いた様子で肩を上下させたあと、いつもいつもその端正な顔を惜しげもなく綻ばせてくれたりする。その常に新鮮で嫌味のない可愛らしくもあるリアクションで、社内外問わず慕われているんだろうなと、私も、もちろん彼をそんなふうに見ていた。
飲み会では、末席にてひとりで飲む瞬間があった私にまでグラスの空き具合を気にしてくれ、さらにお気遣いいただき隣に座ってくれた。本当、気配り上手なウサギさんだと、酔って赤くなった目から連想してしまった動物を思わず言ってしまえば、何故だか少し拗ねられてしまった。機嫌を直してもらうためにお水の入ったグラスを差し出し、日頃の活躍や飲み会での動きを尊敬の眼差しとともに誉めると途端に照れられ、それもまた可愛かった。
「……」
「どうかしましたか? 佐伯さん」
「いえ。なんでも……」
照れるお顔がカッコよくて可愛くてキュンとして思わずそれらに殺されそうになったなど……言えるもんかと口をつぐみ、やっぱり彼は素敵な人だと、大和さんという人となりを再認識した飲み会だった。
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