帰りたい場所
そうして、あっという間に夜である。
もうすぐ大和さんの帰宅時間だと、リクエストされた夕食のカレーをとろ火で温める。サラダと小鉢は冷蔵庫から取り出して適温に戻す。すると玄関の扉の鍵が回される音がして、私は瞬時にお出迎えに向かった。
「おかえりなさいっ」
「っ」
「大和さん?」
「っ、それっ!」
何故か、指をさされた。玄関扉を開けて入ってこようとしていた大和さんに。
指さしのあと、何故か大和さんは家の中に入ってこず、扉は再び閉められてしまう。
「……え……っ……?」
訳もわからないままその場で硬直していると、すぐさま閉じられた玄関扉は再度開いた。
とても勢いよく。
「っ、ごめんっ。ただいまっ」
そうして、勢いよく抱きしめられる。
「……うん。おかえりなさい」
そうして私を抱きしめる大和さんの腕にさらに力がこもる。
ぎゅうっとされる心地よさと息苦しさに感極まった。
「それ、それずっと言って欲しかった」
「それ?」
「おかえりなさい、って」
「おかえりなさい」
「それ、それずーっと言って欲しかった……の、です、よ……」
らしくない口調な語尾の付け足しは、大和さんの恥じらいを表していてとても可愛らしく、
「おかえりなさい、大和さん」
「ただいま、花菜」
とても、愛おしかった。