愛してるのに愛せない。
しばらく走っていると、

「海だぁぁぁぁ!!!」

目の前に広がる海。
駐車場に停まったバイクから降りて、ヘルメットを返しながらお礼を言う。

その後すぐに着いた二人。
海斗さんは、私を乗せているのに危険な運転するな!と陸さんを怒っていた。
その声を聞きながら波打ち際まで私は歩く。
海に入るにはまだ少し早い季節。
海の水は冷たかった。

「こっちおいでよ。」

そう言う陸さんの声に従って、三人が座る階段に座る。

「そういえば、名前は?」

そう聞く陸さんに対して、秘密です。そう答えると、けち。と唇を尖らせた。

「ところで聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

「はい。」

そう言う海斗さんの声に海を見ながら頷く。

「この人、知らないかな?君と同じ街に住んでるみたいなんだけど。」

そう言いながら見せられたのは、竜王の隣で幸せそうに笑っている姉の写真。

「・・・・。」

「小さいことでもいいんだ。何か知っていることがるなら教えてほしい。」

そう言いながら聞く海斗さん。
私はあらかじめ用意されていた答えを伝える。

「この人なら、駅に行くときに公園で赤ちゃん抱いているのをみました。」

そう言うと、驚いた表情を見せる三人。

「・・・本当にこの人だった?」

信じられないのか何度も確認してくる。

「はい、この人でした。」

何度聞かれても私の答えは変わらない。

「・・・戻ろう。」

そう小さく呟いた竜王は、バイクに向かう。

「・・ごめんね。送るよ。」

そう言うと、陸さんは私の手を引いて、またバイクに乗せる。

「ちょっと急ぐね。」

竜王の後ろを走る陸さんだが、先ほどよりも安全運転をしてくれている。
< 13 / 42 >

この作品をシェア

pagetop