愛してるのに愛せない。
「お前に何が分かる。」

「分かりますよ。」

「嘘つくなよ。」

ふっと小さく笑う竜王。
分かるよ。小百合は私の姉だから。
何度言いかけただろうか。

「・・・あの写真を見れば、分かります。
お互い本気で好きだったんだろうなって・・・。」

そうあの写真の姉は幸せそうだった。

「そこに嘘、偽りはなかったんじゃないですかね。」

「・・・・。」

「・・・・きっと、小百合さんも幸せだったんですよ。
だから、別れを切り出せないで、そのまま消えたんじゃなですかね。」

「・・・・・。
さっき、お前と同じことを小百合から言われた。
今は、幸せなんだとさ。
俺といたときは、辛かったんだと。」

「・・・。」

ゆっくりと吐き出される竜王の声は、ちゃんと聞かないと消えそうなほどにか細い声だった。

「・・・・なぁ・・・。」

「はい。」

しばらく沈黙したあとに竜王は私を見た。

「俺のこと好きって言え。愛していると・・・・俺のそばを離れないと言え。」

悲しみの色を映す瞳に私の心はぐらつく。

「竜王・・・・。」

「頼むよ・・・。その顔で・・・その声で・・・言ってくれ・・・。」

苦しそうに言う竜王に思わず私は

「・・・・好き。愛してる・・・あなたのそばを離れない。」

そう口にしてしまった。
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