愛してるのに愛せない。
笑う私を見て、海斗さんが声をかける。

「くーちゃん・・・?」

「ふふふ・・・。すみません。」

「どうした・・・の?」

そう聞く海斗さんを一瞥して、全員の顔を見た。

あぁ・・姉はこんなにも大勢の人から愛される竜姫だったのか・・・。

そう思ったら、なんだかうれしかった。

「・・・私のことは守っていただかなくて結構です。
守られる立場の人間ではないですし、喧嘩に巻き込まれて死のうが、なにしようがほっておいてもらっても構いません。でも・・・。」

「でも・・・・?」

「・・・もし、私と仲良くしてくださる人がいたら、仲良くしてほしいです。」

それだけ言って、頭を下げて台を降りた。

「やるな!」

陸さんは私を見て笑う。
海斗さんは、呆れたように私を見ていた。

「・・・ってことだ。解散。」

その声でまた倉庫内はざわめきだした。

「俺らは、上に行くけど・・・。」

「私は・・・ちょっと歩いてきます。」

「分かった。じゃあ、なんかあったら大声出して。」

そう言って上に行くのを見送ってから、倉庫の出口へと歩きだした。
下にいる全員が私の動きを見ている。
私が倉庫を出ると、各自、文句の言い合いをしていた。

「なんで小百合さんに似ている女なんだ。」
「あんな人俺は認めたくない。」
「どうせ、竜鬼の姫ってのがほしかったんだろ。」
そんな声があがる。

少しだけ・・・
ほんの少しだけ、認められていないことへの悲しみをかみ締めた。
倉庫の裏手に行くと、そこには、海が広がっている。

砂浜へと降りて、ボーっと座って波を見ていると、

ポスっと背中に何かが当たった。

「・・・・・?」

振り返った瞬間に

カンッ!と額に何かが当たった。

「いた・・・。」

額を擦りながら見てみると、

「空き缶・・・。」

投げられたであろう方向を見ても、誰もいない。
でも、予想は着く。
私は、この倉庫内で認められていない存在なのだ。

「・・・・・。」

空き缶を見て、自嘲的に笑った。
仕方がないのだ。とまた自分に言い聞かせて海を見る。
その間も、体に当てられる空き缶。
たまに小石のようなものまで当てられる。

「・・・・っ。」

ぐっと握りこぶしを作ってひたすら我慢する。
与えられる痛みに耐えているうちに、いつの間にか、何も投げられていないのに気が付いた。
< 25 / 42 >

この作品をシェア

pagetop