愛してるのに愛せない。
それから、海斗さんは、咲に呼ばれて上に行ってしまい、結局二人きりになった。

「・・・・。」

「・・・・。」

お互い無言のまま、淡々と治療をしていく。
包帯を巻き始めると、

「あんた馬鹿だろ。」

そう口を開いた。

「何よ。」

「自分の手にカッターぶっさすとか。しかも、俺の治療のために。」

「・・・・。」

「普通やらねぇよ・・・。」

そう言うこの人はどこか呆れ顔。

「・・・仕方ないじゃない。
ここでは、私は汚物扱い。
治療するには、皮膚一枚剥ぐしかないって、あの時思ったんだから。」

「・・・・。」

巻かれていく包帯を見つめている。
私は、ただ黙々と治療を続けていた。
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