愛してるのに愛せない。
”竜王“

それは、少し前まであった有名な暴走族の総長の名前。
その暴走族の名前は、”竜鬼“

「でも、なんで?」

「それがさ、ほら、竜鬼がなくなる前に、竜姫いなくなったじゃん?」

「あー・・・。」

「その竜姫を探しに帰ってきてるって話よ!」

竜姫・・・
竜王が愛した女の人。
誰もが憧れる、そんな存在。

それから、テンションがあがったゆきが、竜王探しに行ってくる!と意気込んで、どこかに走り去るのを見送ってから、私は一人、家路に着いていた。

「竜王ね・・・。」

あの人のことはよく覚えている。
大晦日暴走の日、ゆきに誘われて見学しに、知り合いの男の子と一緒に三人で海岸まで行ったのだ。
遠くから聞こえてくるバイクの重低音、近くなる度に、お腹に響くあの感じ・・・。
真っ暗闇の中に、無数のライトの光・・・。
今でも、こんなに鮮明に思い出せる。

それに、みんなよりも、竜姫のことはよく知っている。

なぜなら、竜姫は・・・。

「あ、お帰り。」

「・・・ただいま。」

目の前で、生後間もない赤ん坊を抱いてる、実の姉なのだから・・・。

「由良、寝たの?」

「少し前にね。」

静かに布団に寝かせた姉は、そのままソファーへと、座る。

「お腹は?ママが、ご飯作ってくれてたよ。」

「あ、食べる。」

キッチンに行って、おかずを温めながら、密かに姉を見る。
竜王のこと・・・知っているのだろうか・・・。
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