愛してるのに愛せない。
「いい加減に・・・お前。」

私の瞼の傷を見て驚いた顔をした。

「顔を洗ってるときに引っ掻いちゃったの。」

「どう見たって引っ掻き傷じゃ・・・。」

そのとき、良助くんの目が、水道に移動した。

「・・・・蹴られたのか?」

「自分でやったの。」

「蹴られたんだな?」

「自分で怪我したの。」

「誰にやられたんだ!!」

「自分でやったんだってば!!!」

そんな怒鳴り声が倉庫内に響き渡る。
シーンとした倉庫内に、誰かが階段を下りてくる足音が聞こえる。

「今度はなに?」

「海斗さん・・・。」

現れたのは、海斗さんだった。

「この傷。」

「自分で引っ掻いたの。」

「嘘つくなよ!」

「じゃあ、誰かにやられたっていう証拠でもあんの!?」

そう言うと良助くんは黙った。

「・・・とりあえず、治療しよう。」

そう言われて、二階へと連れてかれる。

中に入ると、部屋には、咲しかいない。

「座って。」

大人しく座ると、海斗さんは黙って治療してくれた。
それにお礼を言って立ち上がると、咲が声をだした。

「海斗。」

その声で、海斗さんは、部屋から出て行く。
私も出て行こうとすると、咲に止められた。
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