愛してるのに愛せない。
「座れ。」

咲にいわれるがまま、私は座る。
咲は、それを見うと、私の目の前に座る。

「痛むか?」

そう優しく傷をなぞりながらきいてくる。

「痛くない。」

「そうか・・・。」

咲はどこか切なそうに眉根を寄せる。

「怪我をしたならすぐに言え。
この顔に傷をつけるな。」

「・・・・。」

「わかったか?」

「小百合さんに似ている顔に傷が付くと悲しいから?」

そう聞いた私に咲は一瞬だけ黙る。

「そううだ。」

それでも・・・・否定はしなかった。
どこか悲しい気持ちになった。
私は、姉の代わりではない。
私を見て欲しいのに・・・・。

「わかった。」

その想いが咲にばれないように、目を伏せて返事をした。
< 34 / 42 >

この作品をシェア

pagetop