愛してるのに愛せない。
咲が私を見てくれないことくらいわかっていた。
分かった上で私はそばにいる。

「・・・。」

倉庫の冷蔵庫に入れていたソルティライチを持って、また海を眺めていると、海斗さんがやってきた。

「・・・・。」

海斗さんは、私の隣に座ると、何も言わずにコーヒーを開ける。

「・・海斗さん。」

「・・・んー?」

私の問いかけに海斗さんは、優しく返事をしてくれる。
思わず涙が出そうになった。

「私・・・ここにいていいんですかね。」

「・・・・。」

「なんだか・・・・分からなくって・・・・。
咲のそばにいるって・・・こういうことなんですかね。」

「さー・・・。
その答えは俺はあげられないけど・・・。」

海斗さんは、一呼吸おくと、私を見た。

「俺は、くーちゃんがここにいてくれて嬉しいけどなぁ。」

そう優しく笑ってくれた。
泣きそうになるのをグッと堪えて、海を見つめる。
そんな私と同じように海斗さんも海を見つめる。
海斗さん。と呼ばれ、どこかに行く後ろ姿に、心底、ありがとうとお礼を言った。

もうすぐ、海に太陽が沈む。
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