九月一日〜朝から晩まで~
「どうして矢澤さんが出てこない」
「紗良のことだけ、
紗良って呼ぶつもり?」
一度も呼んでいないし、
これから意地でも呼ぶことはない。
相手はどうあれ、
絶好のドライブ日和。
直射日光の当たる、
南国を模した海岸沿いの長い直線が続く。
「あれ…たしかここだったのに。
消されちゃったな」
見たらたぶん、喜んだ。
「なに?なにあった?」
「おまえが答案用紙の裏に描いてる、
落書きみたいなやつ」
ついでに言うと、
授業中にもよく描いている。
なかなか秀逸な色使いのスラング。
「あれストリートアートだからね…!?
落書きって言わないでよ…」