九月一日〜朝から晩まで~
第3章 逃避行-忌々しい正午
海岸沿いの車道から、
緑の芝生の敷き詰められた広場が見えた。
奥にあるガラス張りの建物は、
美術館になっている。
遠いあの日も、
このオープンテラスのレストランに来た。
ここからも夏が去った。
お昼時にと、
同情してしまうほど客の姿がまばらだ。
紗良は迷わず灼熱のテラス席を選び、
芝生越しの海を満足気に眺めた。
「すごい綺麗ー!
アオくん、いいとこ知ってるぅ」
「店が、ないかもと思った…。
前に来たの、遥か昔なんだわ」
正しい大人は、
こういう所は有りらしい。
「へぇ…。
美術館デート?彼女、…と、だよね?
…彼女、いるんだ…?」