九月一日〜朝から晩まで~
「はい。はい。いいえ」
「…あれ?
紗良一番最初、なに聞いた?」
「忘れた。
一個ずつ聞けばいいんじゃね」
「だよね。彼女、いる?」
わざわざクーラーのない場所で、
景色をゆっくり楽しまないのはなぜだ。
悲しさに、肘付き身を乗り出した。
「いないと不味くね…?
おまえさっき、
カップルランチ頼んでなかった?」
「頼んだけれども」
運ばれて来たサラダ越しにも、
真昼の海は美しい。
あの人も、本当に美しかった。
不機嫌にパスタを口に運ぶ、
紗良の長い髪を耳にかける仕草が、
時を超えてダブる。