九月一日〜朝から晩まで~
数度変わった体感温度に息つく間もなく、
紗良は元気を取り戻していた。
「あっち、行ってみよ。
洞窟みたいなのがあるー」
「下るのかよ」
引き上げていたはずの手は、
いつの間にか引かれている。
怪しげな横穴の前、
こわごわと奥を覗き込んだ。
中は薄暗いものの、
深くもなく、
向こう側にはまた同じような緑が見える。
「洞窟…じゃ、なかった。
トンネルだね」
「涼しい場所だ!やったー!」
「えっ…入るの!?
なんか思ってたより暗い…
わ、先行かないで!」
「お化け屋敷じゃねーぞ」
騒がしすぎて、
お化けも引っ込むであろう。