九月一日〜朝から晩まで~
滑り台の見える木陰のベンチに移動し、
やっと蝉の声だけが聞こえる。
今頃。
女子高生誘拐事件として、
大捜索が始まっていたりするんだろうか。
ここでは下界のサイレンは届かないが。
レンタカーに戻った途端。
スーツを着た男が近付いてきて、
逮捕も有り得る。
「ありえない…。
話相手いなくて、登るの…すごい…
きつかったんだから…」
走って来たらしく、
さすがの十七歳の息も上がっている。
「早くね?
なんでもっとゆっくり登って来ないの?
オッサンを、
すこーし休ませてあげようとか、ないの?」